涼と忍はこの別荘に来るのは初めてではない。
静和と涼と忍と──3人で過ごした時間があった。
「──涼は、由貴とはキスまで?」
2階の部屋の窓辺に腰掛け、忍が聞いた。涼は忍のすぐそばに座り「うん」と答える。
「──忍ちゃんは?」
「え?」
「四季くんと、そうなりたいと思う?」
「…そうね」
忍は少し考えて、答えた。
「四季にふれてもらっていると、安心するみたい。気分が良くなるの。他の男の人にそうされたら抵抗あると思うんだけど。私は四季なら『いいよ』って答える」
「──好きだから?」
「うん。好きだから」
「涼の『好き』は違うの?」
「──」
「涼、会長のこと好きなのに、そうなりたいと思ったことないの。一度も」
涼の目は澄んでいた。
忍には何となく涼の気持ちがわかる。好きな人と同じ気持ちではないと感じた時に不安になる気持ちも。
「涼は、涼の『好き』でいいのよ」
「──」
「だって、由貴は『涼だから』好きなんだもの。今はいいよ、って由貴が言うのは、由貴がそれだけ涼のことを大事にしたいって思ってくれてるってこと。涼が由貴を大事に想っている気持ちに嘘なんかないわ。嘘だったら、涼がこんなつらそうにしてるはず、ないもの」
「でも…会長の気持ちは?涼は、このままでいいの?」
「それは由貴と話をしてみたらいいわ」
忍の言葉は誠実だった。
「『好き』というのは、どれだけその人に向き合えるかということよ。大事なのは、恋の魔法から醒めても、その人を大事に出来るかということ」
「……」
「涼は由貴といて、楽しいことばかりだった?すれ違ったり、つらいことはなかった?」
涼は首を振った。
忍は微笑んだ。
「それでも、涼は今、由貴のそばにいるでしょう?投げ出したくなるようなことがあっても、その人を大事にしたい気持ちが、由貴にも涼にもあったということよ」


