時は今




 すると猫は四季の書いた「ページ」という字だけをひょいっと前足で隠してしまった。四季はそのまま読む。

「50…音?──ああ、五十音?」

「ニャー」

 四季は笑った。

「そっか。五十音書いておけば前足で指して、言葉を伝えられるからね」

「ニャー」

 伝えたいことが伝わったのか、猫は嬉しそうにしっぽをぱたりと振った。

 四季はノートに五十音を書くと猫を抱っこして、フローリングの床の上に座り込んだ。

 数学のノートは五十音表になってしまったので、英語のノートをメモするために広げると、四季は「いいよ」と猫に伝える。

 猫は「ニャー」と答え、伝えたい文字を指し始めた。

 最初に伝えてきた文字の連なりを見て、四季は言葉を失う。



『ぼくはさくらざわせいわです』



 僕は桜沢静和です──。

「静和さん…?」

 四季は猫を凝視して、毛並みを撫でてみた。

 猫はおとなしく「ニャー」と鳴いた。

 やがて、猫は続きの言葉を指し始める。





『鍵の秘密を伝えます。

 忍を守ってください』