「んー。いいねー。こういうの」
ハンドルを切りながら綾川隆史は楽しそうだ。
天気は晴れ。出かけるには絶好の日だ。
助手席には桜沢涼が座った。別荘までの道程は涼か忍しか知らないため、涼が案内役を買って出たのである。
「ごめんね、涼ちゃん。ほんとは由貴くんと座りたかったでしょう」
隆史が聞くと涼は「うん」と答えた。智が後ろで「涼、お前素直過ぎ」と笑っている。
運転席の後ろに吉野智、助手席の後ろに揺葉忍が座り、いちばん後ろのシートには綾川由貴と綾川四季。
忍は「眠くなったら私が案内役代わるからね」と涼に言った。
四季はうとうとしている。朝からしっかりピアノだけは練習してきたらしい。
由貴は四季に小さいブランケットを渡す。
「四季、眠ってていいよ。起こすし」
「うん…」
実を言うと四季は退院してからのこういう車に乗っての遠出は初めてである。
乗り物酔いはないようなので体調さえ崩さなければいいのだが。
智が四季を振り返り「あらら」と楽しそうな表情になった。
「王子様が眠ってるぜ。忍、キスしろ、キス!」
「ええ!?」
四季が目を開けて「もう、眠れないよ」と怒った。
隆史が遠い目をして「…いいなぁ」と呟いている。由貴が「いいなぁ、じゃないだろう」とツッコミを入れた。


