「あーもう暑い!」
ダンスのステップが上手くいかなくて、智がTシャツを脱ぎ捨てた。
Tシャツの下はレオタードであるため問題はない。
試験前に文化祭で演劇部がやるはずの劇中にあるダンスを一応仕上げておきたいのだが、まだ完成していない箇所があるのである。
「ともちん、ちょっと休もう。も、あたし無理」
「私もー」
智と一緒のステップを練習をしている部員も同様である。
「──すごいね」
舞台に近づいてくる人物を見て女子が起き上がった。
「わ、四季くん!」
「吉野さん、いる?」
「あー四季」
智が汗を拭きながら、舞台からひらりと降りた。
「これ、練習用のCD持ってきた」
「サンキュ」
部員が集まってくる。
「何?何のCD?」
「柔軟体操用の。お前らもやる?」
「えー?これ以上はいいよー」
悲鳴をあげる部員に智は苦笑して、四季に「見てけば?」と言った。
四季は、妹のバレエの練習や舞台を見て来ているから、ダンスの基本的なことが頭に入っているのだ。
リズム感が優れているから、全体の動きを見てのアドバイスをもらえるなら嬉しい。
「そうだね。少しだけ見て行っていい?」
四季が答えた。智がくるりと振り返って発破を掛ける。
「はーい。観客一名様ゲットー。今のとこだけあと一回練習したら終わり!」
「ちょっと待って。休憩あと1分ー」
「四季、ダンス見る目肥えてるからな。適当な動きしたらまる分かりだからな!」
部員の表情が若干ひきつり、四季がフォローするように言った。
「大丈夫だよ。演劇部のダンス見応えあるって、ダンス部の部長が言ってるくらいだし」
「ほら、ともちん、大丈夫だよってー」
「ダンス部の部長は、振り付けしてくれたから!そりゃ親心だろ。四季がどう見るかはわかんないし」
ほらほら、と追い立てている。何だか吉野智はこういう姿が妙にはまる印象がある。
試験前でもギリギリまで練習するだけあって、演劇部の意識は高い。
やがて、全員がぴたりと自分の立ち位置につき、音楽が流れ始めた。


