時は今




 忍を送り、ピアノの練習をしてから登校した。

 鍵のことが気にかかったが、すぐには謎はとけない。ただ、静和の奏でた『一瞬の「いま」を』の旋律が、気持ちを奮い立たせるものになった。

 静和に、揺葉忍と音楽との両方を任された気分だ。

 弾けるようにならなければ。

 身体に無理のないようにという思いと、もっと身を入れて練習したいのにという思いとの葛藤がある。

(食事、きちんと摂らないと)

 ──もっと強くなりたかった。





「うーわー何事なの、四季くん、それ」

 器楽室から戻ってきた四季の手の楽譜を見て、本田駿がげんなりした。

「教科書より普通に重いでしょ、その楽譜さんたち」

「僕には普通だけど」

 荻堂芽衣と桧山亜絵加が四季の後ろからついてきた。

「幻想即興曲弾いてたのー。すごいの」

「ね」

 駿が芽衣と亜絵加に尋ねる。

「あのー、四季くんには忍さんという彼女がおるはずですが、それでも四季くんいいですか?」

「だって、彼女いてもかっこいいのはかっこいいもん。ね?」

「うん」

 駿は「わからん」というように四季を見る。

「四季くんはこんな女の子たち連れて歩いて、忍さんに罪悪感感じないんですか?」

「ピアノを聴いてくれる人を選ぶピアニストなんている?僕は僕の弾くピアノを喜んでくれる人がいたら『ありがとう』って思うし」

「私たちが聴きたいって言ったんだよー。四季くんが連れて歩きたいって言ってるんじゃないもん」

「そうそう」