「すまないね、忍」

 四季を連れて家まで来た忍を見て、早瀬は部屋にあげてくれた。

 四季は何か不調があればすぐに病院に来るように言われているらしいが、四季が嫌がった。

 心配だった忍は四季に病院に行こうと言ったのだが──。

「ああ、忍、あんたしばらく四季のそばにいてやりな」

 早瀬はあっさりそう言ってのけた。

「え?で、でも」

「どう体調がおかしいのか、やばかったら自分でわかるだろ。そうしょっちゅう行ってたら主治医も疲れるだろうし。明日まで熱が下がらなかったら行けばいい。忍、あんた、今日大丈夫かい?」

「え…。はい」

「こういうこと、たまにあるんだよ。今までは由貴呼んでいたりしたんだけどね」

 早瀬と忍の話し声に美歌が部屋から出てきた。

「お兄ちゃん、熱あるの?」

「あんたはいいの。忍がいるんだから」

「でも、美歌も心配だもん」

 ちょっと怒った調子で美歌が言う。忍の腕をつかまえた。

「忍さん、泊まって行くなら、美歌の服着るといいよ」

「え…っ。あ、あの」

「お兄ちゃんの部屋でお泊まり。楽しいよ。由貴お兄ちゃんも時々ある」

 それは由貴だからだろうと思うのだが。

 しかし気にしているのは自分だけなのか、早瀬も美歌もそのあたりはアバウトな様子で、気にしている気配はない。

「滝沢先生のところ行った時、お兄ちゃん、忍さんが眠るまでそばにいてくれたって話してたから」

 …ああ、それもあるのか。

 忍は若干恥ずかしくなったが、早瀬と美歌に信頼されているのだ、と思うことにした。