傷ついた自分の感情よりも、好きな人が傷つくことの方が自分の感情として痛いということだろうか?

 そんなことが本当にあるんだろうか。

 四季の目は子供のように純粋だった。正答を待っているように忍を見ている。

 正答など何処にもないというのに。

 忍は優しい表情になる。

「ごめん。私は四季の言っていることよくわからなかった。でも四季がそう言うのならそれが正しいのよ」

 四季はわからないというような表情になる。

「他の人の言う自分の気持ちって何?どういう感情を差してそう言ってるの」

 忍は俯く。

「徹底的に虐げられて感情を欺かれた人間は極論か無責任な感覚でしか物を言うことはないわ。私はそれだけが正しいとは思わない。それは大人の理屈だから」

「僕は子供なの」

「四季は四季だわ。大人でも子供の人もいるかもしれないし、子供でも大人の人もいるでしょう」

「……」

「悩まないで。端的な話、四季よりも身勝手な人間は多いというだけの話よ」

 四季は考えていることがぐるぐるになってきて「頭、痛い」と呟く。

「忍」

「…何」

「そばにいて」

 忍はちょっと笑った。