「お祖父様は…伯父さま勘当したこと、後悔していらっしゃるのかしら?」
炒飯を口にしながら、美歌が言った。四季は「そうだね」と答える。
「淋しいのかもしれない。出て行けと言った手前、自分から戻ってくるように言うのは言いにくいだろうし…。お祖母さまの話を聞いていたら、考え直して欲しくてあんな仕打ちをしただろうに、そのまま戻って来なくなってしまったという感じだし」
「その愛情がたぶんお兄ちゃんに集中しちゃってるのよね。伯父さまのようにいなくなってしまうのが怖くて。由貴お兄ちゃんなんか可哀想よ。本当は私とお兄ちゃんと同じくらいにお祖父様に大事にされてたっていいのに。由貴お兄ちゃん、とても気を遣っているじゃない」
「うん…」
何かきっかけがあればいいんだけど、と四季は考え込む。
「ごちそうさま」と言って美歌が席を立った。
「あ…お兄ちゃん。私が帰ってくる時、千歳さんが見えられてたわ」
「何て?」
「ご旅行に行ってらしたみたい。お菓子を持っていらしてたわ。…お兄ちゃんに会いたかったんじゃないかしら?体調がすぐれないようですからって華江さんたちが言っているの聞いたけど」
お兄ちゃんの好きになりそうな人って千歳さんのことではないわよね?と美歌が訊く。四季は「違うよ」と柔らかく否定した。
「僕の好きになりそうな人が気になるの?」
「それはそうよ。…どんな人?」
「──僕が途中でピアノを弾く手を止めた時‘自棄にならないようにね’って言ってくれた子」
四季の顔は由貴のことを話している時のように優しかった。
それで美歌はズキンとする。
(ああ、たぶんお兄ちゃんは)
今度は本当に大事に出来そうな人を見つけたのだ──。


