時は今




 薬を飲んだせいか、頭がぼーっとしている。

 痛みが和らいだのはいいが、貧血なのか気分はすぐれない。

 学校に残って練習したい気はあったが、今日は無理をおすとダメな気がした。

 多少無理をして調子が上向きになる時と、そうでない時があるのである。

 杏たちに「先に帰るね」と言って教室を出た。

 外は雨上がりの匂いがする。校門前で由貴と四季に会った。

「──あ…」

「あ、忍だ。今帰り?」

 由貴がいつものように話しかけてくる。その横にいる四季は少し困ったように言った。

「そこで僕を見て身構えないで欲しいんだけど」

「…ごめん」

「何?何かあったの?」

「さっき保健室で会ったの。休んで行けばいいのに忍真面目だから、薬だけ飲んで教室に戻っちゃったんだよね」

 泣いたことにはふれないように四季はそういう言い方をした。忍はそれでほっとする。

 四季は由貴には言っていないのだ。そのことは。

「大丈夫?忍。送ろうか」

 四季がさらりと言うと、由貴がたしなめた。

「四季はそういうこと言える立場じゃないだろう」

「でも由貴はもっとそういうこと言える立場じゃないよね。涼ちゃんがいるし。僕は本気で忍が心配なだけ。さっき本当に顔色悪かったから」

「あ…私、大丈夫。ほんとに。ひとりで帰れる。ありがとう」

 忍は頑張って笑顔を作った。四季が「そう?」と、やや反論ありげな表情になる。

「僕が今忍の恋人だったら、無理にでも送っているところだけど」

「──」

「四季」

 忍の当惑した表情を見て由貴が仲裁するように言った。

「忍、気をつけて帰って。あと無理はしないで」

「うん」

 忍は「また明日」と言って、ふたりの先を歩き出す。

 間があって、由貴が四季に問いかけた。

「忍と何かあったの?あんな強い言い方、いつもの四季らしくない」

「……」

 四季は行き場のない感情を持て余すように頭に手をやった。

「──忍を見ていると、苛々する。もっと幸せでいても良さそうな子なのに」