その日の放課後。


「あの!すみません!」


部活が終わり、水道で顔を洗っていると突然声を掛けられた。

タオルで顔を拭きながら振り返ると、制服姿の彼女が立っていた。


「あ…保健室の…」

「さっきはありがとうございました!私、お礼言うの忘れてしまって」

「そんなのわざわざいいのに…あの子何ともなくて良かったね」


彼女は「はい!」と満面の笑みで頷いた。

太陽のような、暖かい笑顔。


ドキッと心臓が大きく跳ね上がった。

金縛りにあったかのように体がいう事を聞かない。


こんなの初めてだった…

見惚れて、目が離せないなんて。


「あれ?葵、どうした?」


聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、ハッと我に返った。

何だったんだ…今の…


「恭介!里美が今日倒れちゃって…先輩に保健室に運ぶの手伝ってもらったからお礼に来たの」

「え?倒れたって?」

「貧血だけど、一応病院行ったから私もこれから行こうと思って」

「じゃあ俺も行く。着替えてくるから待ってて」


恭介は俺にお礼を言った後、部室に走って行った。