*奏人side*


「これから3年3組対3年4組の準決勝戦を始めます!礼!」

「「「お願いします!!」」」


両クラスの気合に満ちた熱い声がフィールドに響き渡る。

礼の後、顔をあげるとセンターラインを挟んで目の前に立つ小野田が、俺を真っ直ぐに見据えてニヤリと笑った。


あいつのあの顔には見覚えがある。

実力が格上の相手やライバルと戦う時、小野田はああいう顔をする。

強い相手と戦える事が単純に嬉しくて、楽しみ過ぎて。

「絶対に負けない」と言わんばかりに闘志をメラメラさせるんだ。

冷静に見えて、実は誰よりも熱い男。


そっか、小野田はまだ俺をライバルだと思ってくれてんだな…


「…ふ、そうかよ。なら、その喧嘩買ってやるよ」


俺は不適に笑いながら小野田に視線を送り返した。



自分のポジションに移動した俺は、無意識に観客席を見渡した。


「葵ちゃん、まだ来てないね」


いつの間にか近くに来てた萩原が、俺の視線の先を見ながら言った。