猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



「終わりですかー?」


「四人だけだ。後は平地で始末すればいい」


「ですねー。私も逃げるのって嫌だし、かっこわるいと思うんで、ここらでぎゃふんと言わせましょうかねー」


ルカが落ちないと分かったか、また容赦ない手綱が大きくしなる。


馬にとっては地獄のデッドレースにしても、最後の一踏ん張りだとエレナは道を外れた。


獣道の走行。
怖いもの知らずもいいとこで、ところどころに生える木を避けながらエレナは突っ走りを馬に命じる。


「どこに向かう」


「見晴らしがいいとこですよー」


言った瞬間に視界が開けた。緑で覆われた場所から、今度は青。浅瀬の川がせらせらと穏やかに流れていた。


その場に踏み入った馬車は静寂の破壊神でしかない。魚たちが逃げ出し、水しぶきが唸る。