猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



なだれた転落に巻き込まれない他の者は見向きもせずに追ってくる。


承知の上だし、一人やられた程度で縮こまれては倒しがいがない。


外と繋がった出口からルカが出た。懸垂以上に腕に力を入れて、車両の上に身を上げた。


「ちょっと、ちょっとー」


なんて無謀な。あちらには飛び道具ありの、こちらは走る不安定な足場。どちらもルカにとって不利益でしかないが、ルカがヘマをするわけもなかった。


肩膝をつき、つま先を車両上部の四隅に水平に取り付けられた棒の一つに引っかけた。


もともと、車内に入りきらない荷物を上に乗せて落ちぬように紐を取り付けるためにある突っ張り棒にしても、僅かな隙間につま先をかければ幾ばくかの踏ん張りがきく。


少なくとも、投げ落とされる心配はないだろう。