猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



四回目の舌噛み。


それが更にルカの怒りを沸き立てる。


舐められて、とは相手にもそうだが、エレナに守るべき弱い存在と思われたのが心外だった。


「止まらなくていい、自分の身ぐらいは自分で守り、向かう奴の処理ぐらい造作もない……!」


「んー、でもー」


生返事をしながら、エレナが後方を見る。敵をまけたらと思えど、ねちっこい。未だにこの馬車との追いかけっこをするのだから、どんな荒業を披露しても合わせてくるだろう。


何よりも、今の内に片付けた方が闇討ちされるより楽に思えた。


片付けるならばエレナがやりたいものの、馬車を止めて囲まれるわけにもいかない。


「分かりましたー、じゃあ、スピード落としますよー。さーん、にー、いー」