猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



ただ、こんなにも荒唐無稽な進み方をする馬車に相手がすんなり追いつくことも、ボウガンの狙いが上手く定まらないのも踏まえて安全と言えばそうだが――レインの『外の敵より身内の敵』という言葉がルカの頭によぎった。


エレナが敵なはずもないが、こんなにも荒くては筐体の中の人物は堪えられるものでもなかった。


いくら歯を食いしばろうとも、上下の突き上げる揺れで無意味となる。五分も経っていないのに舌を三回噛んだ。


揺れによる酔いも出てきて良い頃合いだろう。前兆として、意識がくらりと傾いた。


「スピードを落とせ、私が片付ける……!」


「危ないですよー。大人しく籠ってくださーい」


「ここまで舐められて何もしないのは癪に障る。今に奴らをまけたとしても、明らかに私たち狙いなら二度目がない内に片付け、っ」