猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



「狙われているのか……!」


「ピンポーンっ、せいかーい!」


花丸をくれそうな声だが、手綱をまた馬の体に当てたらしく、いななく声が辺りを轟かす。


耳を後方に傾ければ、蹄の音がいくつか。


相手も馬に乗り、こちらに攻撃をしているのだろう。


何かあるとは予想していたが、こうもあからさまな敵意を向けられては頭を抱えそうになる。


もっとも頭を抱える手はバランスを保つために座席の背もたれを掴むが。


「何人いる?数によっては相手をしてやる」


車両つきの馬と人を乗せただけの馬の競い合いでは、遅かれ早かれ追いつかれる。ならば、不安定な場所より平地に立って相手をした方が得策だが――エレナとて、そうはできないからこそ走り屋並みのドラテクを披露しているのだ。