猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



馬車の最高速度は20km。馬一頭の脚力と引く車両の重さから、この箱馬車でもギリギリ出る速度か。


体感速度なために予想でしかないが、理屈で20km以上は出ないと分かっていてもこの荒っぽさでは50km出てもおかしいと笑わない。


いや、笑えない状況だ。


ただでさえ、揺れに苦悶するのに更なる地獄を――言うよりは、事の原因が車内に顔を出した。


扉が空いたわけではない。後部の覗き窓横に鋭利な刃が突き刺さる。


弓矢にしては太く、ダーツにしては長すぎる。車両を突き破るとまでなれば余程の力で放たれたらしく、観察している内に二本目が入ってきた。



後方から攻撃、そうしていきなりのスピードアップとなれば外を見なくても分かる。