猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した



(二)


蹄(ひづめ)の音が小さくなった。


舗装された道から、土を踏んだらしく、リズム良い足音が崩れてしまう。


時折、車輪が石を弾いて馬車が揺れる。いくら快適な乗り物と言えど、道により簡単に左右されてしまうのだ。


馬車にも種類があり、長距離に適したのは辻馬車や乗り合い馬車のように多くのものを乗せられる頑丈なものが好ましい。


ルカが乗るのは二輪の二人乗り箱馬車。街を渡る貴族のお洒落でしかないのに、それで迎えるのが最高のもてなしだと実用性ではなく豪華さで勝負したらしい。


送迎される身でケチをつけるわけではないが、無駄な贅沢というのはどの国も変わらないとルカは片隅で思った。


その件を本思考に入れないのは、ルカの手元には書類の束があるからだ。