中流貴族が使いそうなボックス型の車両は悠々とした乗り心地を提供することだろう。ルカが何も言わず、扉を閉めようとしたところで、何か言いたげなミカエルの目を見てしまう。


何か言っては余計に心配されるとルカは始終、余計な私情は口にしなかったものの――このままの顔で放って置くのはひどく寝覚めが悪い気持ちになる。


少し間を置いて。


「後は頼んだ」


的確な言葉と共に薄く笑ってみせた。


言葉ではなく顔で安心させる手段。ミカエルにしか向けられない一瞬のものにしても、そうしてくれた気持ちが嬉しく思えた。


「はいっ」


喜ぶミカエルを見た後に、ルカが扉を閉める。きちんと乗ったことを確認したあと、エレナは手綱をしならせようとしたが、ミカエルが近づいてきたので止める。