一枝の寒梅






わたしは落書きだらけの柱に体を預けて、もたれかかれながらそっとある句を唱えた。






「――今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな……」




わたしがつぶやいた言葉はすぐに風にあおられてふっと闇の中へと消えてしまった。



この句はわたしが好きな小倉百人一首の句のひとつ。


この歌の意味は


今はただひたすらあなたをあきらめてしまおうとそれだけを、人づてでなくて直接言う方法があればいいのにと。



そういう意味だった。



――そう、この歌は龍馬さんに対する今のわたしの気持ちだった。