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薬品の匂いが鼻をかすめた。ゆっくりと重い瞼をあけて、ぼんやりする視界のなか誰かを見つける。

「っ、真咲!!」

刹那、衝撃が体を襲う。腹に激痛が走り思わず顔をしかめれば誰かは俺から離れる。だんだんとクリアになっていく視界。誰かを認識すると同時に、俺は誰かに向かって手をのばした。


「けい、た。」

「真咲、よかった。ほんと、よかった。」

涙を流しながら俺の無事を喜ぶ啓太をみて、胸がしめつけられる。ごめん、と無意識に唇が動いていた。


ぎゅ、と俺の手を握りぐしゃぐしゃの顔で俺を見つめる。申し訳ない気持ちと、よくわからない温かい気持ちが胸の奥に広がった。


「...俺、みきと、ともかに、あったんだ。」

ぽつり、とそう呟くと啓太は泣きはらした目を擦り、「え?」と聞き返した。


「おれ、うらまれて、...なかッ、た。」

「当たり前だろ!だって、美紀も、智香も、俺も、お前のこと、好きなんだぜ。恨むわけないだろ!」

「けいた、」

俺、どれだけ泣けば気が済むんだろう。涙腺が壊れたのかもしれない。悲しくないのに、涙が止まらない。


「おれ、...全部、やりなおしたい。」

「ああ。」

啓太は俺の手をさらに強く握り、しっかりと頷く。



「一緒にやりなおそう。今度は、昔みたいに1人にしない。ずっと傍にいるよ、真咲。」