真咲は、すごく、可愛くなっていた。一瞬美紀が生き返ったのかと思った。私は無意識に真咲の席に歩み寄り、話しかける。

「...真咲、だよね?」

真咲は視線だけをこちらに向けて、じっとあたしの顔を見た後表情をかえずに口を開く。「うん。」声は、真咲のものだった。どこかほっとしている自分がいる。何にほっとしているんだろう。返事をしてくれたから?美紀じゃなかったから?


あたしは笑顔を張り付けて、会話を続けた。「久しぶりだね、最近ずっと話さなかったじゃん。」「そうだね。」「啓太も転校しちゃったし。一言も言ってくれなかったのヒドイよね。」「...。」「それにさぁ、」「智香。」

会話を遮り、真咲は綺麗に微笑んだ。こんな笑顔、見た事ない。

「...まだ、真咲の事好き?」

「ッ、へ?」真咲は、自分の事を名前で呼んだりしない。良くわからない質問に首をかしげると真咲はふああ、と欠伸をして目を擦る。あれ、この仕草、どこかで。

「ねえ、すき?」

眠たそうな目で再度私に問いかけた真咲は、美紀にしか見えなかった。「ッ、ともだち、と、して、なら。」そう答えるのがやっとだった。


「ねえ、智香!私、もう一回仲良くしたいな。」

なに、これ。冷や汗が頬を伝う。こんなの、こんなの真咲じゃない。誰なの。

「...み、き?」思わずそう聞いてしまった。

「違うよ?真咲だよ。」変な智香、と笑う表情はやっぱり美紀そのもので戸惑う。「...どうしたの?智香。」


ここで、真咲を拒絶したら、ダメな気がする。もう、一生、前のような関係に戻れないような気がした。私は戸惑いながらも口を開く。

「うん、仲良くしようね。」

たとえ真咲が、今までの真咲じゃなくても私は受け入れたいと思った。見て見ぬふりはもう、いやだ。もう一度、もういちどだけ前のような関係になりたい。

今度は手放さないから。だから、私は真咲を待とうと思った。今は真咲じゃないけど、いつかきっと、元の真咲に戻ってくれるよね?と、自分に言い聞かせる。