長い検査が終わり、俺は夜道を歩いていた。仲良く母さんと手を繋ぎ、アパートを目指す。「真咲。」

ふと、母さんが俺を呼んだ。視線を向けると、母さんは悲しそうに笑う。

「あなたは何も悪くないのよ。」「...ウン。」無表情で返事をした俺を見て、母親は泣きそうな表情を見せる。「でも、」「?」「美紀のおかあさん、俺が悪いっていってた。」

「大丈夫、何も悪くないんだから。聞いた話じゃ、助けを呼びに走ったんでしょう?それってすごいことだと思うの。真咲は何も悪くない。正義のヒーローよ。」

「おれ、なにも、まもれてな、い。」

「護ったじゃない。」「...え?」「大事な大事な、私の愛しい子供を護ったわ。」「っ...かあ、さん。」「真咲はお母さんの宝物なの。」俺、生きてていいのかな。これで、よかったのかな。母さんのやさしい言葉がじわじわと心の中にしみこんでくる。

___真咲、まさき!


けど、それを拒むかのように脳内に美紀の声が響いた。

___まさき!まさきまさきまさき。

「...美紀。」「え?」ぽつり、と呟いた言葉をきき、母さんは俺に視線をむける。


俺、やっぱり、美紀をたすけなきゃいけない。まもらなきゃ。

「真咲?どうしたの?」

静かに瞳を綴じ、脳内で響く声に答えた。(美紀、ごめん。おれ、ちゃんとおまえのことまもるよ。)「真咲?」(おれ、おまえのことすきだよ。)「真咲!」(俺、美紀のおかあさんにいわれたんだ。みきをかえしてって。でも、美紀はしんじゃったから、いないよね。)「真咲!どうしたの!?」(だからさ、俺、)



(お前になるよ)



「真咲!」揺す振られ、俺ははっと目をあけた。「大丈夫?」「うん、大丈夫だよ!」にっこり、俺は笑った。