「勿論よ。なら明日、色々持ってくるわね!」無駄に張り切っているオバサンを見て曖昧に笑った時だった。「ん、」向かいのベッドから小さい声が聞こえる。
「智香!」「お姉ちゃん!」
オバサンと侑里乃は智香が眠っているベッドに近寄る。「、あれ?お母さん、侑里乃?」「そうよ、大丈夫!?あなた階段から落ちて気絶してたみたいなのよ!ほんと気をつけなさいね。」「う、うん。」
智香はちらりと俺に視線を向ける。「あ、」「...。」俺は人差し指を口元にあてて智香を黙らせた。「お、お母さん。」「貴方、頭を強くうったみたいだからしばらく検査入院することになったのよ。着替えとかいろいろ明日持ってくるから、大人しくしてるのよ?」「う、ん。あの、私はもう大丈夫だからかえっていいよ!お父さんもそろそろ帰ってくる時間でしょ?」
智香は笑って誤魔化そうとしているらしいが、うまく笑えていない。震えながらぎゅ、とシーツを握りしめ、俺の存在を気にしながら早く帰ってと訴えている。
(...智香。)
真咲にしては低い声でアイツの名前を呼んだ。完全に怒ってる。温和な真咲がここまで怒っているのは初めてかもしれない。理由は、アイツが俺のこと好きだから。にやけそうになるのをこらえて、智香の親と妹が帰るのを待つ。
真咲、智香をお仕置きしていいの?(...しなきゃ、マサキ、とられちゃうでしょ?)「とられるかもな。」からかうように言えば、真咲は黙り込む。嘘に決まってるのに。俺は真咲しかいらないよ、好きになれないよ。
(...して。)「...。」(マサキ、)「...。」(智香に、お仕置きして)「りょうかい。」
明日、智香にお仕置きしてやるよ。お前が望むならな。
「智香、また明日来るからね。」「もうわかったわよ、はやく帰って!」「はいはい。じゃあね真咲ちゃん。また明日。」「ウン。」
「...。」
「行くわよ侑里乃。」
オバサンが、早くいらっしゃい。と侑里乃に声をかける。しかし、侑里乃はじっと俺を見ていた。「?」「お母さん、」
「真咲ちゃん、ふたりいる。」

