座ったまま寝ている。しかもかウエディングドレス姿で。

 止めてくれ。起きて下さい。皺になるぅうう!とスタッフ達の悲鳴が扉の向こうで聞こえる。


 「花嫁様は一生に一度で凄く嬉しいのに、なんで寝るの~!」


 結姫が正しい。正しいが、当人が寝ているのだから意味がない。だって眠いんだもんと起きたら椿は言うだろう。


 小さな体で椿を揺すりながら、結姫は涙混じりに言う。

 「起きて~」

 願いが通じたか。反応がなかった体が動いた気がして結姫の手が止まった。

 「…ん…」

 鈍い動作で目を開けた椿は、足元の結姫と自分を映す鏡を交互に見て立ち上がった。

 「な…」

 「な?」