「へっ!お前の椿センサーも寿命だな。花嫁に逃げられる花婿なんて傑作だ。
さっそく今晩の肴にしてやるよ」

 ネクタイを緩め、シャツの第三ボタンまで開けた狼狽は静を睨んだ。

 
 「それはどうも。ところで俺の椿ちゃんセンサーは壊れたわけだけど。
お兄さん(シスコン馬鹿)センサーは今故障中?」

 
 「うっせーよ!俺はどんな離れた場所でも椿と繋がってるんだよ、心が!」

 
 「だったら早く椿ちゃんの場所教えてよ」


 「…わかんね」

 「…使えない兄貴だね。無能ってよく言われない?」

 「うっせーよ。泥棒猫。俺の椿を返せ!」

 「返して欲しくば早く見つけてよ」

 騒ぐ二人に、見学に来た若いカップルの視線が突き刺さる。