もう離れるのをあきらめて、体の力を抜いた。


脱力した私を、千梨は更に強く抱きしめる。


でも痛くない程の力加減をしてくれていて、やっぱり優しい人なんだと思ってしまった。


第1理科室の時と同じ香りが、鼻に届いた。


「ねぇ……千梨って香水つけてる?」


千梨の顔を見つめて聞いてみた。


「ん?香水?つけてるよ。高校に上がった時から」


ニコッと笑って私の質問に答える千梨。


間近で学年一のイケメンの笑顔を見られるなんて、私は幸せ者なのかもしれない。


女子に知られたら、とんでもない事になりそうだけど……