想像しただけでゆるゆるになる顔を見られない内に、教室に足を向けた。


ところが初めて中庭で会話した日みたいに、呼び止められる。


「あのね千梨。ケータイの番号とアドレス教えて欲しいんだ。連絡し合うのに使うんだって」


「ん?了解。神蔵に教えとく」


「あ、太陽が“私に教えといてくれ”だって。この際だから私のアドレスも千梨に教えとくね」


……………ハイ?


固まったオレを尻目に、ケータイを取り出す連香。


ピンクの本体にクマのストラップが付いていて、連香らしいケータイだ。


「赤外線でいいよね?千梨っ」