「お父さんが…必ず、エリックを助けてくれるわ…」



母親の悲痛な声に、涙は増して行く。

…お父さん…。

父親から貰った大切な心臓が、私の体の内で、動いてる。

居ないけど、居るんだ。

私と、生きてくれてるんだ。



「咲恵子…。お母さんも、一緒だから…」



「お母、さん…ッ」



愛する人を失った母親は、強く強く、生きようとしてる。

お腹に手を当て、看護師さんを見ると、「大丈夫」と、言ってくれた。

母親も知ってたのか、私の手に、自分の手を重ねた。



「貴方も、お腹の子も……頑張った。エリックだって、起きてくれる…」



私も、そう信じてるよ。