真紅の世界



「起きろ」


抑揚のない声に、沈んでいた意識が浮上する。

この時間帯には寝てしまっている私を、このお決まりの言葉で起こすのが、ウルの日課になっているのかもしれない。
そして、感情の読めないウルの声で起こされるのが私の日課にもなっている。


頭が重く感じるのは、この後されることが嫌だと思う拒否反応からなのか、今までの疲れのせいなのか。

頭の痛みに顔をしかめながらも、のそりと起き上がってベッドから降りる。

そんな私を待つことなくアッサリと身体を翻し地下室へと向かうウルを、トボトボと追いかけた。


行きたくないけど、行かなくちゃいけない。

しかも自分の足で。


何が悲しくて、自分を傷つける場所に自ら行かなくちゃいけないのか。

気を紛らわせようとしても、ウルは最初の時のように饒舌にしゃべることはなかった。いくら話しかけても返事を返してくれることはないと、今日までのウルの態度でよく分かっていた。

私も何も話してくれない人に、ずっと一人で一方的に話し続けられるほど面の皮が厚いわけではない。
だから私はただ黙ってウルについていくだけだ。


いつものようにひんやりと冷たい地下室に入る。

そこはすでにもう見慣れた光景が広がっていて、ここにいる人たちはきっと、私たちより過酷な毎日に身を置いているんだろう。
それが当たり前で、それが自分の仕事だと思っている。


私みたいに、夜中だけここで実験されて、その上けがを治してもらえるのは、ここにいる人たちと比べられないくらい破格の待遇なんだと思う。