「私は実験台の12番だ。 だから私は12と呼ばれる。 お前は88番だ」



淡々と告げられる言葉に一瞬頭が真っ白になった。


実験台? ウルが12で私が88?


処理しきれていない情報を、一生懸命飲み込もうとしているのに、ウルは「ここだ」と重い鉄の扉をギギっと軋ませながら開けて中に入って行く。


その鉄の扉に続く廊下は、さっきレティのいる場所まで通った廊下とは比べられないくらい質素なものだった。

ウルとの話で夢中になっていて気付かなかったけれど、ここは地下なのだろう。
壁一面が石で覆われていて、鉄の扉は所々錆びているし心なしか肌寒い。

そしてその鉄の扉の中の光景は、思わず目を覆いたくなるような悲惨なものだった。


傷だらけの人たち。

その外見は様々で統一性はない。 唯一の共通点はみんな額に色々な色の宝石が一つ埋め込まれているという点だけ。

石の床には今まで流してきた血であろうものが染みついていて、異様な臭いが立ち込めている。


それより分からないのは、どうしてここにいる人たちは、お互いに傷つけ合っているかということだ。
無表情で魔法や剣で攻撃し合って、傷ついて。それでもうめき声ひとつ上げずに、自分で治癒しながらまた傷つけ合いはじめている。

その光景はとても見ていられるものじゃなかった。


「実験台は、主に魔法を使える奴隷層がなる」


カツカツと石の床を鳴らしながらその部屋の中に入って行くウル。

私はもう、その場から動くこともできずに、今にも崩れ落ちそうな足で立っていることがやっとだった。