「ね、レティの場所知ってる?」


藁にもすがる思いで聞いてみた。

確実に知らないだろうと思っていたのに、黒い物体は「キュイッ」と得意げに鳴いた後ふよふよと大きな扉をすり抜けて行ってしまう。



え!?

すり抜けられるなんて、アイツ幽霊!?


その驚きで、さっきまで躊躇していたのを忘れて扉を開けて黒い物体を追いかける。


ふよふよと前を漂う、黒い物体の後をただひたすらついていく。


廊下は意外にも綺麗で、等間隔に天井からぶら下がるシャンデリアが、下に敷いてある赤い絨毯を綺麗に照らしている。


ふかふかと裸足の脚が少し絨毯に沈む感覚が気持ちいい。

そう言えば痛んでいた左手も全然痛みもなくて、着ている服までちゃんと元通りになっている。

これもレティの言う魔法の力のおかげなのだろうか。

っていうか、私の格好はまだ某クマのキャラクターの着ぐるみ風パジャマだった。



……まさかこの黒い物体、私がクマだと思って同類意識持ってるんじゃないよね。