はつこい




いつもの帰り道。
だが今日は、その見慣れた風景も変わって見えた。


「…そいや、まだ名前を聞いてなかった」

橘君が突然口を開いた。

「あっ…私は篠原愛子」

そう言おうとして顔を上げた。
スラリとした長身で、きちんと整った顔にある二重の綺麗な瞳が、小さめな私を見下ろしていた。

「“愛子”か…。
…可愛い名前だな」

「は?」

“可愛い名前”なんて、今までに一度も言われたことがなかった。

「…ごめん、ヤだったかな?」

「そんな事ないよ!
初めて言われただけ…」

「ならよかった。
あ、俺…「橘君、でしょ?」

私は橘君の言葉を遮って尋ねた。

「うん。俺は橘 圭助。
どうして分かったの?」

橘君は不思議そうな顔をして尋ねた。

「クラスで有名だよ、女子の間で」

「そうなの?
なんで俺なんか…」

もう一度橘君が尋ねた。

「そりゃ、橘君が格好いいからでしょ」