はつこい




一瞬だった。

橘君がこっちをほんの一瞬だけ振り返った。
私の目は、橘君の目と向き合った。

「!」

思わず目を反らした。


「どうしたの?」

美奈子ちゃんが、くりくりした大きな瞳で私の顔を覗きこんだ。


「なっ…なんでもない」

慌てて誤魔化す。

「?」

皆が不思議そうな目で、見てくる。

「大丈夫、愛子?
顔、赤いよ?」

「えっ?マジ!?」

私の頬は紅潮していた。
だって、目があったあの一瞬。
よくわからないけど、暖かい何かが心臓を締め付けたんだもの。


ジリリリ…

「あっ、ホラ…鈴がなったよ」

私が逃れるように言うと皆そそくさと自分の席へ帰って行った。

その後の授業は、まるで耳に栓をしたかの様に何も入ってこなかった。