妖怪と人Ⅰ




「ちょっとそこの坊や。道を訪ねたいんだが。」
目の前にいる老婆が尋ねてくる。


あぁ、うるさい。


さっきから同じ言葉を何回も………



「耳障りだ。早くどっか行け。」


「ふふ。やはりお前さんには私の声が聴こえていたんだね。無視するなんて酷いじゃないか。」



「お前らは、いつも人間に無視されてるじゃないか。今さら、そんなこと気にしてないだろ。」


「でも、お前さんは視えてるじゃないか。視えているのに無視するのは、酷いことだろう?」



お前らに、心なんかないだろ。



僕がそう言ったら、老婆は悲しい顔をした。