後ろから聞こえた声に、手を止めて振り返る。
そこには、鋭くあたしを睨みつける、昨日と変わらない中村さんの姿があった。
「そんな伴奏じゃ、気持ち良く歌えるもんも歌えないよ。息が詰まる。
あ!あんただろ、えーっと……小松さんだっけ?」
「え?」
戻ってきた芽依を、中村さんが指した。
不思議そうな顔をした芽依が、首を傾げながら近づいてくる。
「あんたが弾いてくれよ。ピアノと言えば、あんたなんだろ?」
「でも……舞花が弾いてたんじゃ……?」
「この子じゃ話にならないよ。下手くそすぎて、頭が痛くなる」
「一緒に練習したこともありますけど、彼女はそんなに……」
戸惑いながらも必死で声を張ろうとする芽依の前に、あたしは左手を差し出した。
眉の間に皺を寄せる芽依を見て、にっこりと微笑む。
あたし、ちゃんと笑えてるわよね……?
「芽依、ここは代わりにお願い。あたしは、あっちを手伝ってくるわ」
ぎぎっとイスをずらして立ち上がった。
そのまま芽依の肩にぽんっと手を置いてその場を離れる。
振り返らないで歩き続けてから、あたしはそっと、柱の陰に隠れた。
ピアノはもう、さっきの曲を奏で始めてる。
「……そこまで下手なわけじゃ、ないんだけど」
あたしは、小さく笑ってからまた歩き出した。
そこには、鋭くあたしを睨みつける、昨日と変わらない中村さんの姿があった。
「そんな伴奏じゃ、気持ち良く歌えるもんも歌えないよ。息が詰まる。
あ!あんただろ、えーっと……小松さんだっけ?」
「え?」
戻ってきた芽依を、中村さんが指した。
不思議そうな顔をした芽依が、首を傾げながら近づいてくる。
「あんたが弾いてくれよ。ピアノと言えば、あんたなんだろ?」
「でも……舞花が弾いてたんじゃ……?」
「この子じゃ話にならないよ。下手くそすぎて、頭が痛くなる」
「一緒に練習したこともありますけど、彼女はそんなに……」
戸惑いながらも必死で声を張ろうとする芽依の前に、あたしは左手を差し出した。
眉の間に皺を寄せる芽依を見て、にっこりと微笑む。
あたし、ちゃんと笑えてるわよね……?
「芽依、ここは代わりにお願い。あたしは、あっちを手伝ってくるわ」
ぎぎっとイスをずらして立ち上がった。
そのまま芽依の肩にぽんっと手を置いてその場を離れる。
振り返らないで歩き続けてから、あたしはそっと、柱の陰に隠れた。
ピアノはもう、さっきの曲を奏で始めてる。
「……そこまで下手なわけじゃ、ないんだけど」
あたしは、小さく笑ってからまた歩き出した。


