「新撰組?」




この時代に来て、早一週間。思いもよらぬ出来事が起きた。朝早くからお妙さんに呼ばれたと思ったらそんな内容だった。





「せや、今日夕方頃来るさかい宜しくなあ」






お妙さんによれば此処はどうやら新撰組御贔屓の店だったらしい。今日はなにやら少人数で来るとのこと。新撰組に会えるかどうかはわからないが、この状況を聞いたらきっと康ちゃん驚くだろうなあ。なんだか面白い展開になってきた。惠瑠はニヒヒと笑った。






「わかりました」




早速、裏方にまわって準備を始めた。基本は熱燗やお摘まみ程度のものを作ったり、部屋の掃除が大抵の仕事だ。もちろん今でも表には出ない。荷物を運んだりするときは注意しながら作業をするのだ。





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せかせかと朝から働いていたらいつの間にか夕方になり、惠瑠は大量の酒が入った箱を運んでいた。はっきり言ってかなり重い。今日に限って量が多すぎる。本当は裏から入らなければならないのだが、そこまでもちそうにないから表から入ることにした。まだ客も来ていないだろう。




入り口を跨ぐと、お妙さんの姿が目に入った。







「お妙さーん、これどこに置けばいいですかー?」




呑気に大きな声で呼んで、お妙さんを見れば驚いたような顔をしたと思ったら、しまった、という顔をした。ん?と思い、よくみれば誰かと話していたみたいだ。その時惠瑠も、あ、しまったと思った。




惠瑠は慌てて出ていこうとすると―――







「待て、小娘」






低い声がする男に止められた。お妙と話していた相手だった。