「支度は?」
落ち着いた日本語だ。黒いスーツのアジア系の顔をした男は無表情で問う。
「あ、はい」
香月は慌ててバックを取って、部屋から出た。
「……」
彼はずっと無言で背を向けて、すたすた前に歩いて行く。護衛、というのは私語も禁止しているのかもしれない、と香月は勝手に解釈した。
しかし、どこの国の人だろう。リュウ様の下で働いているということは、やはり中国人なのだろうか? それにしても、みんな日本語が上手い。世界用語に日本語は入っているのだろうか。
会釈する警備員をすり抜け、ガラスの扉の奥に入る。
想像以上の大きな音と、たくさんの人に飲み込まれていく。スロット、だろうか、パチンコ台みたいなのが壁にずらりと並び、あとは個々に、ディーラーを囲んでルーレットを回している。
「ここでゲームができる」
彼はようやく必要なことだけ喋った。敬語は習っていないのだろうか、片言でもないが、無表情に加え、無愛想であることは間違いなかった。
「あの……これ全部お金がかかるんですよね?」
「俺といれば無料だ」
「あ……はい」
まあ、日本からの招待客なのだし、それくらいの待遇であってもいい気はする。
「えーと……何が面白いですか?」
「……初めてか?」
「あ、はい」
「なら……スロットかな」
スロットって、確か3つ合わせるとコインが出るんですよね?
さすがにそれは聞かずに、彼がカウンターからとってきてくれたコインで遊ぶことにする。ところが、絵が2つくらいうまく当たったが、すぐにコインはなくなってしまい、
「難しいですね。全然当たりません」
「よく見ればわかる」
「え、タイミングじゃないんですか?」
「絵が見える。慣れればの話だが」
「あ、そうなんですか……上手な人は、例えば、最初にさくらんぼが出れば、次はどのタイミングで押せばさんらくぼなんだってゆー、そういうタイミングなのかと思いました」
「……」
彼はそれはこちらの独り言ととったのか、無言で先へ進む。
「まだ遊ぶのか?」
「あ、いえ……」
できれば食事がしたい。パーティというくらいだから豪勢な立食だろうと思って、結局ルームサービスも取らずにバックの中の飴で凌ぎ、とにかく勝手に運ばれて来たランチから何も食べていない。
「ここから先がパーティ会場になる」
カジノを抜けて、まず目に入ったのは赤い絨毯の上に立つ大勢の正装した人、その次に見えたのは天井にある大きなシャンデリア。クリスタルであろう。それだけでも見に来た価値があるほど輝いている。
落ち着いた日本語だ。黒いスーツのアジア系の顔をした男は無表情で問う。
「あ、はい」
香月は慌ててバックを取って、部屋から出た。
「……」
彼はずっと無言で背を向けて、すたすた前に歩いて行く。護衛、というのは私語も禁止しているのかもしれない、と香月は勝手に解釈した。
しかし、どこの国の人だろう。リュウ様の下で働いているということは、やはり中国人なのだろうか? それにしても、みんな日本語が上手い。世界用語に日本語は入っているのだろうか。
会釈する警備員をすり抜け、ガラスの扉の奥に入る。
想像以上の大きな音と、たくさんの人に飲み込まれていく。スロット、だろうか、パチンコ台みたいなのが壁にずらりと並び、あとは個々に、ディーラーを囲んでルーレットを回している。
「ここでゲームができる」
彼はようやく必要なことだけ喋った。敬語は習っていないのだろうか、片言でもないが、無表情に加え、無愛想であることは間違いなかった。
「あの……これ全部お金がかかるんですよね?」
「俺といれば無料だ」
「あ……はい」
まあ、日本からの招待客なのだし、それくらいの待遇であってもいい気はする。
「えーと……何が面白いですか?」
「……初めてか?」
「あ、はい」
「なら……スロットかな」
スロットって、確か3つ合わせるとコインが出るんですよね?
さすがにそれは聞かずに、彼がカウンターからとってきてくれたコインで遊ぶことにする。ところが、絵が2つくらいうまく当たったが、すぐにコインはなくなってしまい、
「難しいですね。全然当たりません」
「よく見ればわかる」
「え、タイミングじゃないんですか?」
「絵が見える。慣れればの話だが」
「あ、そうなんですか……上手な人は、例えば、最初にさくらんぼが出れば、次はどのタイミングで押せばさんらくぼなんだってゆー、そういうタイミングなのかと思いました」
「……」
彼はそれはこちらの独り言ととったのか、無言で先へ進む。
「まだ遊ぶのか?」
「あ、いえ……」
できれば食事がしたい。パーティというくらいだから豪勢な立食だろうと思って、結局ルームサービスも取らずにバックの中の飴で凌ぎ、とにかく勝手に運ばれて来たランチから何も食べていない。
「ここから先がパーティ会場になる」
カジノを抜けて、まず目に入ったのは赤い絨毯の上に立つ大勢の正装した人、その次に見えたのは天井にある大きなシャンデリア。クリスタルであろう。それだけでも見に来た価値があるほど輝いている。

