レイジが出ることで、次の予約待ちの人が入れ替わりになるということをすっかり忘れていたが、それが一番重要なところでもある。2人でこの家賃50万を分けるとなりと、ユーリの手取りがいくらかは知らないが、かなりしんどいに違いない。
「レイの友達の友達やって。一般の予約待ちの人が入るん嫌やろうし、次も知り合いにするゆーてた。俺も会うたことはないけど、若い男の人らしいよ」
「えっ、ユーリさんはここにいるんですよね??」
「おるつもり」
「ですよね、ですよね!!」
「家賃もその人が払うってさ」
「その若い人が? レイジさんが今払ってる50万をそのまま払うの?」
「それでもええとかゆーてるらしい。けどなあ、まあそんなわけにもいかんやん? 俺も働いてるし。俺はレイの会社の社員やから、今まではそれでも良かったけど、なあ?」
「そうだよね、せめて3万くらい……」
「30万とは言わんけど、3万は少なすぎへん?」
「じゃあ、5万くらい?」
「その人に25万払ってもらって、俺らで半分分けん?」
「12万5千円!? 私の給料いくらだと思ってんですか!」
「けど普通そんなもんやで!?」
「えー……高いよ。……実家帰ろうかなあ……」
「まあ、それでもええし。もうここにおらないかん理由はなくなったからね」
「じゃあ逆にユーリさんがここにいる理由はあるんですか?」
「いやまあ、俺もないっちゃないけど。もし、愛ちゃんが出るゆーんなら、出る、かな。そんな知らんお兄さんと一緒に住む意味もないし。襲われたら、誰が責任取ってくれるわけ?」
 ユーリはどうでもよさそうに、テレビのチャンネルを変えた。
「……私は、レイジさんとユーリさんだから、ここにいるのが楽しかったのかな……」
「けど俺だけではおもろーないやろ?」
「そんなことないけど……」
 香月は大きく溜息をつく。ユーリと2人でも構わないのだが、家賃がネックになる。かといって、普通のマンションを2人で分ける意味もないし。
「けどさあ、新しい人、来る気満々だよね? ってことは、私たちが今出るとかできなくない?」
「できなくなくない?」
 ユーリはこちらを見ずに繰り返す。
「できなく、なくはないか……。新しい人によるよね?」
「そーいや、明日の朝来るかもとか言うてた気がしたな。今日の夜くらいにはレイからなんか連絡くると思うねんけどなあ」
「え゛っ、なんだ、もう決まってるんじゃないですか!」
「けどレイの友達の友達やからいけると思うよ」
「何か根拠あるんですか、それ……」