絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ

 その言い回しがおかしくて笑う。
「(笑)、いいですよ。えーと、じゃあ……どこにします?」
「少し歩くけどいい? 5分くらい」
「いいですよ、どの辺り?」
「中央ビルの前」
「カフェ?」
「うんそう、知り合いがやってるとこ」
「ふーん」
 今日のレイジは深く帽子を被り、薄い色のサングラスをしていて、トレーナーにジーンズというカジュアルな格好だから、テレビのレイジしか知らない人はこれがレイジだということに全く気づかないだろう。
「誰かと待ち合わせ?」
「あ、宮下店長と。ちょっと仕事の話があってね」
「あぁそう……宮下さん、元気?」
「うん、今は本社だから、そこの中央ビル。そこに行ってるよ。お店は違う店長になったの」
「わざわざ待ってまで食事するの?」
 レイジが何を言いたいかがすぐに理解できる。
「うん、今日ランチに来てね、えっと向こうのホテル。パスタとケーキのバイキング」
「ああ、聞いたとこあるよ」
「うん確か。で、せっかくそこまで来たから誰かと食事して帰ろうと思って、そういえば宮下店長に話したいこともあったなあって」
「ふーん……」 
 レイジの新しい巣は東都マンションで、ここからはまた少し場所が違うので、ここへは仕事に来たのだろうか。
「遠くから見てすぐ分かった」
「え、あ、そう?」
「うん、だって目立ってるもの」
「地味な服着てるつもりなんだけどなあ」
 佐伯との食事のつもりで来たので、若作りのためにピンクのレースがついたセーターなんか着てしまったが、まあ、一般的な格好ではある。
「存在が」
 またこのタイミングで何故意味深なセリフを吐くのかが分からない、相変わらずなこの人。
 中央ビルのまん前にあるカフェは、雑誌でよく掲載されているらしく、切り抜きが壁にいくつも貼ってあり、午後6時半の店内も人で賑わっていた。
 気遣ってだろう、勧められた手前の席でなく、彼は奥へ進んでいく。
「悪いけど、このままでいるね」
 帽子はとったが、サングラスのことである。
「うん、そのままでいてほしい」
「(笑)、いや、わりと平気なんだけどね」
「ここ、女の人多いし大変なことになりますよ」