「もしもし、香月です。お疲れ様です」
『あぁ、はい。お疲れ』
「今日、夜、空いてます?」
『うん……ちょっと待って』
多分デスクを離れて休憩室にでも行くのだろう、雑音が数秒聞こえる。
『はい、どうした?』
「いえ、食事にでも行こうかなと思って。今、中央区まで来てるんです」
『あ、そう……じゃあ今日は早めに切り上げる』
「大丈夫ですよ、まだ買い物もしたいし」
『うーん、でも早くても9時かなあ……』
「あ、そんなに遅いんですか」
『うん、最近残業が続いててな……、どうする?』
「待ちます。ゆっくり買い物したいし、終わったら電話してください」
『あそう……。どうした? 何かあった?』
「いえ(笑)、何もないですよ(笑)」
『なら、いいけど』
「じゃあ、連絡ください」
香月は予定通りゆっくりとウィンドウショッピングを楽しむことにした。9時とは考えていなかったが、少なくとも、8時まで仕事をしていることは予想していた。
特に興味のない雑貨や洋服を次々と見て回る。楽しくはない。ただ、考えているのは、今日出会った松と、今電話した宮下と、遠くにいる榊のことだけ。
松と自分が2人きりでデートをする。
あまり考えたいシチュエーションではなかった。今日の揺れは、佐伯に対する同情からきたものだと自分でも自覚していた。佐伯と笹井と松の関係がどれほどのものだったかは聞かなかったが、少なくとも、それなりにプレッシャーをかけられていたことは十分に伝わった。
でなければ、わざわざ隠してまで、偶然を装ってまで出会わせたりしなかっただろう……。
「また今度気がむいたら、全員で食事でも」
特に悪くはない、実現しても良い程度の締めで終わったことは、自分に対しても、また、佐伯に対しても、笹井、松に対しても良い結果だったと思う。
ふと目にとまったジュエリーショップのネックレス。
確か昨日、スタッフルームにおいてあった雑誌の広告で見た。
ダイヤが五つ縦に連なっているシンプルなデザイン。価格は23万円税込み。
買えない金額ではない。だけど、仕事にアクセサリーをつけて行く趣味はないし、第一、アクセサリーは貰うことに意味があるのだと常に思っている。
ふと、顔を見上げると、背後に巨体が一つ。予想もしない人影に、香月は声を上げた。
「うわあ!」
その声に歩いていた数人がこちらを見た。
「しっ」
レイジは口元で人差し指を立てる。
「久しぶり。何してんの、こんなとこで」
いいながら、ネックレスの値段を確認しているのが視線で分かる。
「うーんと、時間潰し」
「何時まで?」
「9時くらいかな」
「僕も今丁度時間あるんだよね、久しぶりにお茶でもしない?」
『あぁ、はい。お疲れ』
「今日、夜、空いてます?」
『うん……ちょっと待って』
多分デスクを離れて休憩室にでも行くのだろう、雑音が数秒聞こえる。
『はい、どうした?』
「いえ、食事にでも行こうかなと思って。今、中央区まで来てるんです」
『あ、そう……じゃあ今日は早めに切り上げる』
「大丈夫ですよ、まだ買い物もしたいし」
『うーん、でも早くても9時かなあ……』
「あ、そんなに遅いんですか」
『うん、最近残業が続いててな……、どうする?』
「待ちます。ゆっくり買い物したいし、終わったら電話してください」
『あそう……。どうした? 何かあった?』
「いえ(笑)、何もないですよ(笑)」
『なら、いいけど』
「じゃあ、連絡ください」
香月は予定通りゆっくりとウィンドウショッピングを楽しむことにした。9時とは考えていなかったが、少なくとも、8時まで仕事をしていることは予想していた。
特に興味のない雑貨や洋服を次々と見て回る。楽しくはない。ただ、考えているのは、今日出会った松と、今電話した宮下と、遠くにいる榊のことだけ。
松と自分が2人きりでデートをする。
あまり考えたいシチュエーションではなかった。今日の揺れは、佐伯に対する同情からきたものだと自分でも自覚していた。佐伯と笹井と松の関係がどれほどのものだったかは聞かなかったが、少なくとも、それなりにプレッシャーをかけられていたことは十分に伝わった。
でなければ、わざわざ隠してまで、偶然を装ってまで出会わせたりしなかっただろう……。
「また今度気がむいたら、全員で食事でも」
特に悪くはない、実現しても良い程度の締めで終わったことは、自分に対しても、また、佐伯に対しても、笹井、松に対しても良い結果だったと思う。
ふと目にとまったジュエリーショップのネックレス。
確か昨日、スタッフルームにおいてあった雑誌の広告で見た。
ダイヤが五つ縦に連なっているシンプルなデザイン。価格は23万円税込み。
買えない金額ではない。だけど、仕事にアクセサリーをつけて行く趣味はないし、第一、アクセサリーは貰うことに意味があるのだと常に思っている。
ふと、顔を見上げると、背後に巨体が一つ。予想もしない人影に、香月は声を上げた。
「うわあ!」
その声に歩いていた数人がこちらを見た。
「しっ」
レイジは口元で人差し指を立てる。
「久しぶり。何してんの、こんなとこで」
いいながら、ネックレスの値段を確認しているのが視線で分かる。
「うーんと、時間潰し」
「何時まで?」
「9時くらいかな」
「僕も今丁度時間あるんだよね、久しぶりにお茶でもしない?」

