その時が、やってきた。





アタシ達の前には照明の消えたステージが待っている。





「みんな、準備はいい?」





それぞれがうなずく。





「これでアタシ達の運命が決まる。それぐらいの覚悟、見せてやろう」





やるからには、やってやる。





ミクが言っていたことを思い出す。





バンドを組んでほしい、とメガネだったミクがアタシに言ってから三年が経った。





全てのきっかけを作ったシュウジがいたあの頃とは、違う。





アタシも、シュウジも違う道を進もうとしている。





それがいいか悪いかなんて、アタシにはわからない。





「私も覚悟できてます」





だけどね。





アタシ達は進むしかないんだ。





他のヒトからすれば間違いだと思われても。





過去の自分に否定されても。





だから、アタシは歌う。





あの頃とは違う自分になるために。





今、アタシはここにいるんだと。





この歌が、アナタに届くと信じてる。





「何があってもウチが支えるよ」





離れていても、もうアタシのことを好きじゃなくても、アナタがくれたこのバンドでアタシは次のステージに立つ。





「ワタシは前にも言ったけど、バンドに入った時から覚悟してる」





アタシ達の中心にはピースサインで作った星がある。





「マコモちゃん入って」





「はい。みなさんがんばってください」





マコモちゃんが指を出すと五枚の花びらを持った花に見える。





それがーーー





「ラズルダズルリリー」





アタシ達だ。





「やるよ!」





今日は何回このセリフを言って背中をたたき合っただろう。





「みんな行くよ!」





薄明かりに照らされたステージに駆け上がる。





それぞれが準備を整えるとミクに合図を送る。





ミクが右手を、スティックを高く掲げた。





その手は、少しも震えていなかった。





「ワン! ツー! ワン! ツー! スリー! フォー!」





踏み込んだエフェクターをくぐり抜けたギターの音が会場に響く。