「明日、小塚さんと一緒にワイドショーに出ることになった。そこでアタシ達の演奏を生放送してもらえる予定だよ」





「え? 生放送ですか?」





「ミク、緊張するなよ」





「曲はどうするの?」





「アルバムから『Fly me to the HEAVEN』と『Heavenly Seventeen』を歌いたい。アレンジはカエデに任せるよ」





「サクリファイスの曲を歌うの?」





「うん。親子であることを最大限に利用するから、リンナにも迷惑がかかるかもしれない」





「何だそんなこと。今更迷惑もないんじゃない? バンドに入るって言った時からワタシは覚悟してるよ。だってワタシ、サクリファイスのボーカル陸の娘だから」





ミクはアタシが言うなり緊張が顔から見て取れるのに、リンナは楽しみで仕方ない様子で、




「今回はエルも歌うんでしょ? カエデ、ツインボーカルでアレンジしてよね。ワタシがハモるから」





と言いながら歌い出していた。





「ごめん、リンナ。テンション上がってるところ悪いんだけど個人的な報告。シュウジと別れたよ」





三人の動きが同時に止まった。





「もしかして、それが声の出なくなった原因?」





リンナはそう言ってアタシの手を握る。





温くて柔らかい手だった。





「―――うん、そうだよ。さっきもね、小塚さんが雑誌記者の心配してたから電話したんだ。………何かね、シュウジを好きだったのか、わからなくなっちゃった………」





泣きそうだった。





いっそ泣いてしまえばすっきりしたかもしれない。





でも、





「それでも、アタシはギターを弾きたいんだって思ったよ。みんなとバンドがしたいんだって思った―――」





それが本心だった。





つながりがなくても、わけがわからなくても、アタシはこの四人でバンドがやりたいって思ったのが真実。





「エル―――」





「エルさん」





「………エル」





三人はアタシの名前を呼んだだけで、何も語らず抱きしめてくれた。





「―――悲しくても、音って生まれるんだね」





アタシは、泣いていた。





そんなつもりはなかったのに、涙がぽろぽろとこぼれた。





ああ、まだみんなに言わなきゃいけないことがあった。





「………小塚さんがね、サクリファイスのデビュー曲にする予定だった曲をアタシ達にくれたよ。アタシ達のデビュー曲にしていいって………」





「それって………」





「―――今回、勝てばって話だと思う」





だから、





「だから、行こう。四人で」





この四人でバンドがやりたいんだ。





「未来へ」





アタシ達が最強だってことを証明しよう。