ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!

「ごめん。一つ、聞き忘れてた」





カエデのマンションまで残りわずかだった。





「―――どうして、離婚したの?」





それはきっと最初に聞くべきだった。





「お父さんは、何て?」





それでも聞けなかったのは、





「聞けなかった。今までのこと、何も後悔してないって言ったから」





「そう………」





どうでもよくなったというか、聞かなくてもよくなったと思ったから。





「全部、私のわがままよ。ほんとうのところはね、ブッ壊してやりたかったのよ。この音楽業界。サクリファイスにはその力があった。聴いてるヒトを巻き込んでしまう力。でも、解散した。陸とはそこが合わなかったのよ。陸はただ、聴いてくれたヒトが温かい気持ちになったり、一緒に盛り上がってくれたらそれでいいと思ってて、私はそれでは足りないと思ってた。もっと高みを目指せると、世界だって行けると信じてた。日本の古い体制の音楽業界を変えられるって。そのためには早い時期でのプロデューサー転向とヒットが必要で、そのためにエル、アナタを犠牲にした。そのことはほんとうに申し訳ないと思ってる。でも結局、今の私はその古臭い業界の人間から変われなかったけど」





「違うよ。そんなことが聞きたいんじゃない」





長々と語った小塚マリコは落ち着いた言葉のアタシに少し不思議そうな顔を向けた。





「お父さんのこと、………アタシのこと、ちゃんと愛してた?」





答えは聞かなくてもわかってるんだ。





今日、話し合ったこと全てがその答えにつながっていること。





「何だ。そういうこと?」





不安になると確認したくなる。





答えがわかっていても聞きたくなる。





それは家族でも親友でも、恋人とでも、





「妊娠した時はさすがに慌てたけど、ちゃんと愛してた。さみしい思いをさせてごめんね。そして、もちろん今も愛してる」





その言葉を聞いて、安心したい。





「………ありがとう。お母さん」





オレンジに染まる母親の横顔にアタシはこの結末もよかったんじゃないかと思っていた。





「じゃあそろそろ宿題の時間ね」





「宿題?」





カエデのマンションの前で車が止まった。





「彼とのこと、調べてる記者がいるみたい」





「彼?」





「アナタの彼氏のこと」





彼女からその話が来るとは思わなかった。





「もうカレシじゃないよ。―――別れた」





「そう。だったら私からはもう何も言わない。前にも言ったとおり、変な写真が出回らなければそれでいいわ」





「うん………わかった」





「今日は早めに寝なさい。明日から寝る間もなく働かせるから」





「はい。―――小塚さん」





「それじゃ、また明日」