小塚マリコの運転する車の中で、今後のアタシ達のことを聞かされた。
現在の配信限定のアルバムのダウンロード数ではハルカさん達ラッドナクスには勝てないこと。
それを挽回するために会見を開き、真実を語ること。
その後、ワイドショーの生放送に出演し、ラズルダズルリリーが生演奏すること。
週末の金曜日に行われる結果発表のライブまでの残り三日間にどれだけの数が稼げるかはわからない。
けれど、勝つためには何だってするんだという彼女の気迫が伝わってきた。
「アナタには辛い思いをさせるだけかもしれない。それでもいい?」
「真実って何を話すつもりなんですか?」
「ありのままよ。私とアナタが親子だということ」
「解散の、サクリファイスの解散のことも話すの?」
「………聞いたのね。それは話す必要がないわ」
「だけど、いずれ誰かが気付くと思う。その時はどうするの?」
「それは別の問題よ。私達が解散したのはあくまで音楽の方向性であって、アナタ達を妊娠したからではないわ」
「リンナのお母さん、陸さんは知ってた?」
「陸には、言ってないわ。ただ、あの子そういう勘は鋭かったから気付いていたとは思う。今回の報道で確信したかもしれない。あの時、マリコはやっぱり妊娠していたのねって、きっと今頃思ってるところね」
「陸さんのこと、今はどう思っているの?」
「記者みたいな質問ね。アナタ、もしかしてこの話を週刊誌に売ろうって魂胆じゃないでしょうね?」
小塚マリコは急に柔らかい表情で笑った。
「まあいいわ。陸のことはもちろん、今も大好きよ。サクリファイスを作ったのは私と陸だから。もう随分と会ってないけど、リンナの話で元気なのを知れてうれしかった」
「そっか。よかった」
「どうしたの? 私が今も陸が嫌いだったらって思った?」
「離婚したことも、解散したことも、アタシとかリンナのせいなんじゃないかってお父さんに言ったら、誰もその決断に後悔してないって。だから前向いて走れって。さっき………お母さんが言ったみたいに」
「あー、同じこと言っちゃった? 昔さ、みんなに内緒で付き合ってた頃によく言われてたんだ。一発大逆転満塁ホームラン打ち上げて前向いて走れって」
「あ、それと、コーヒー苦手なの?」
「そんなことまで話したの!? ………ほら、あのヒトってコーヒー大好きでしょ? もう豆からこだわっちゃうくらい。だから、好きになろうと努力したのよ。そしたらあのヒト、何て言ったと思う? らしくないなって。そんな女の子みたいなのマリコに似合わねえよ。ですって」
思い出してイラだったのか彼女は少し早口でしゃべり続けた。
「私だって女だっつーの。好きなヒトの好きなモノを好きになりたいじゃん? なのにらしくないって何がって思わない?」
こういうのが親子の、母親と娘の会話なんだろうか。
現在の配信限定のアルバムのダウンロード数ではハルカさん達ラッドナクスには勝てないこと。
それを挽回するために会見を開き、真実を語ること。
その後、ワイドショーの生放送に出演し、ラズルダズルリリーが生演奏すること。
週末の金曜日に行われる結果発表のライブまでの残り三日間にどれだけの数が稼げるかはわからない。
けれど、勝つためには何だってするんだという彼女の気迫が伝わってきた。
「アナタには辛い思いをさせるだけかもしれない。それでもいい?」
「真実って何を話すつもりなんですか?」
「ありのままよ。私とアナタが親子だということ」
「解散の、サクリファイスの解散のことも話すの?」
「………聞いたのね。それは話す必要がないわ」
「だけど、いずれ誰かが気付くと思う。その時はどうするの?」
「それは別の問題よ。私達が解散したのはあくまで音楽の方向性であって、アナタ達を妊娠したからではないわ」
「リンナのお母さん、陸さんは知ってた?」
「陸には、言ってないわ。ただ、あの子そういう勘は鋭かったから気付いていたとは思う。今回の報道で確信したかもしれない。あの時、マリコはやっぱり妊娠していたのねって、きっと今頃思ってるところね」
「陸さんのこと、今はどう思っているの?」
「記者みたいな質問ね。アナタ、もしかしてこの話を週刊誌に売ろうって魂胆じゃないでしょうね?」
小塚マリコは急に柔らかい表情で笑った。
「まあいいわ。陸のことはもちろん、今も大好きよ。サクリファイスを作ったのは私と陸だから。もう随分と会ってないけど、リンナの話で元気なのを知れてうれしかった」
「そっか。よかった」
「どうしたの? 私が今も陸が嫌いだったらって思った?」
「離婚したことも、解散したことも、アタシとかリンナのせいなんじゃないかってお父さんに言ったら、誰もその決断に後悔してないって。だから前向いて走れって。さっき………お母さんが言ったみたいに」
「あー、同じこと言っちゃった? 昔さ、みんなに内緒で付き合ってた頃によく言われてたんだ。一発大逆転満塁ホームラン打ち上げて前向いて走れって」
「あ、それと、コーヒー苦手なの?」
「そんなことまで話したの!? ………ほら、あのヒトってコーヒー大好きでしょ? もう豆からこだわっちゃうくらい。だから、好きになろうと努力したのよ。そしたらあのヒト、何て言ったと思う? らしくないなって。そんな女の子みたいなのマリコに似合わねえよ。ですって」
思い出してイラだったのか彼女は少し早口でしゃべり続けた。
「私だって女だっつーの。好きなヒトの好きなモノを好きになりたいじゃん? なのにらしくないって何がって思わない?」
こういうのが親子の、母親と娘の会話なんだろうか。

