バス停に止まった
二三人降りた
一人乗ってきた
黒いジャンパー
黒いマフラー
黒いベレー帽
僕の脇を過ぎる
ケモノの匂いがした
血の匂いがした
最後尾の席に座るのを確認した
振り返ったわけではない
わかるのである
わずかのあいだに
俺は
変化したのだ
いや
進化した
バスの乗降口に書かれているヒエログリフ
読めるのである
わずかのあいだにエジプトの絵文字が読めるようになったのだ
それも一瞬のうちに読める
日本語を読むより百倍以上も早く読める
いや 何億倍も早い
文字の意味を越えて 立体的な映像
複数の映像と
複数の問
いくつもの
答え
瞬間の叡知が
与えられたのだ

