多分、実際に登っているリョク自身よりも、ただ下から見上げていただけの僕の方がよっぽど緊張していたんだろうと思う。


長く感じた時間の末に、リョクの手が崖の上にかかり、そして次にリョクの身体が引き上げられて。


崖の上にリョクの姿が消えた時。


僕は知らずに、深く深く息を吐き出した。


そして、自分がものすごく身体に力を入れた状態で固まったまま、ほとんど息を止めてずうっと見入っていた事にも気がついた。


それと同時に。


足の怪我の痛みをも忘れていたんだって事も。