HAZE GRASS 〜かすみ草〜[完]

正直言って、山田君と話すのは久しぶりで緊張する


頬杖をしていたあたしの隣で、山田君も頬杖をしてグラウンドを一緒に見つめる


数秒沈黙が続いたけど、なんとなく気まずい雰囲気はなかった


「羽柴って、本当にあの吉野彬人と付き合ってんのか?」


いきなりのことで驚いたけど、でもあたしは素直に“うん”と首を縦に振った


だって気持ちを隠したってなにも起きないから


「幸せか?」

「とっても幸せだよ」


そっかと言って校舎側に体を向けた山田君の横顔はどこか寂しそうだった


何でそんな悲しそうなの?って聞きたかったけどやめた


なんだか、聞いたら後戻りできないような気がしたから


「そう言えば、年下の可愛い彼女はどうなったの?」


高校に入った時、山田君と偶然会って“俺彼女できたぁ~”って教室の中で騒いでたのを聞いたことがあった


「今別れの聞きなんだよなぁ~」


それでそんな泣きそうな顔をしてるの?


「そっか、何て言うか、その...仲直りできるといいね」


なんて返したらいいか分からなず、頭に浮かんだ言葉を言ってみる



別れの危機なんていやだろうなぁ、あきちゃんと別れの危機になったらあたし泣いちゃうかもしれないなぁ


「男の人ってさ、女の涙に弱いの?」



さっきの会話からはつながらない発言をしたあたしに驚いたのか山田君はこっちに向いた



でもすぐに平常心に戻って、あたしの質問の意味を考えている


「そうだな、俺は苦手だよ」

「やっぱり、モテる男のいうことは違うね」