HAZE GRASS 〜かすみ草〜[完]

「あきちゃん、頬っぺたから血が出てるよ」

「だからこれは...」


あきちゃんの言葉をきかずに、その場にあったタオルで血を拭った


「大丈夫?痛くない?」

「全然、かすり傷なんて痛くも痒くもない」


ふふっと笑って顔じゅうの血をぬるま湯で拭った


「千紗は温かいな」


あきちゃんが目を瞑って話しだす


「俺には、母さんも父さんもいない。すべて俺が奪ったんだ。」


「俺が中学生の時Blue Birdに出会った、その時のナンバーワンはな颯さんっていって。すごく優しくて喧嘩も強くて俺の憧れだった」


あきちゃんはすごく嬉しそうに悲しそうな顔であたしを見つめた


あたしはなにもいうことができなくて、あたしは黙ってることしかできなかった


「俺がBlue Birdのナンバーツーになった時、龍王が俺らの前に現れた」


龍王...その言葉を聞いてドクンと胸が高鳴った


「俺は血だらけになって龍王と戦った、颯さんが俺のことかばって龍王の面子に刺されて亡くなった」


亡くなった?あきちゃんの大事な人がそんなあっさりと?


「俺は無になって龍王をたった一人ですべて倒した。その時初めて知ったんだ、人は無になれば勝てないことなんてないって」


あきちゃん、それは違うよ


あきちゃんは本当に颯さんを何よりも誰よりも尊敬していたから、だからすごく悔しかったんだよね?


「でも、俺が龍王を倒したからその腹いせに龍王のナンバーワンは俺の親父と母親を刺殺した」


刺殺した、なんてひどいんだろう


耐えきれず、あたしは自分の口元を手で覆った


「俺自分が憎くて憎くてしょうがないんだ、命日になれば思い出しちまうんだ。母親と父親の笑った顔とか」


あきちゃんの肩が震えてる、あきちゃんが泣いている


どんな思いで、どんな思いで今まで生きてきたんだろう