魔法にかけられたみたいだ。

…悪く言えば金縛り。


先ほどと違って彼は立ち止まってあたしを見(下ろし)ている。


話すチャンスなのだけど。

……なんて話すわけ?


後ろを振り向いても、この状況を作り出した彼女はもう居ない。


…ええい!

もう、どうにでもなれ!



「き、昨日の!」

「…………」


「昨日のライブ見たよっ」



勇気を振り絞る。

少しの勇気も、
出してみればたいした事ない。


……でも。



「……だから?」



彼はあたしの勇気を粉々にしてしまった。


…勘違いだ。

彼に恋したなんて、勘違いだ。